INTERVIEW
愛媛FCレディースサポーター
松崎 英次さん
サポーター歴10年以上。女子サッカーのおもしろさを伝えたい
私は有志で集まるサポーターの中心として、愛媛FCLを応援しています。2011年のチーム創設時から応援しているので、サポーター歴10年以上になります。コロナ前は、ホームもアウェイもほとんどの試合に足を運んでいました。開場の4時間前には集まり、他のサポーターと打ち合わせをしたり横断幕を張ったりしながら試合開始を待ちます。
私はもともと愛媛の男子チームのサポーターでした。女子の応援を始めたのは、なでしこリーグオールスターにも選出された中田麻衣子さんが、愛媛女子短期大学のサッカー部に入部されたことがきっかけでした。中田さんは一度引退しながらも、愛媛で現役復帰を果たし、愛媛FCLの初代主将として活躍された素晴らしい選手。最初は中田さんのプレー観たさに試合に出向いていましたが、いつの間にか愛媛FCLのファンになっていました。最近の女子サッカーは昔よりもプレーが激しくなっています。それに加えて、繊細なテクニックや選手の技術が光るプレーもあり、一度見ると女子サッカーのおもしろさに気づくはずです。
女性のスポーツなので、もっと多くの女性にも観てもらいたいですね。今シーズンはクラブも試合会場にスイーツのキッチンカーを出店するなどして、女性ファンを増やすために尽力しています。私たちサポーターも女性が会場を訪れやすいよう、雰囲気の良いスタジアム作りを心がけています。まずは自分たちが楽しみながら応援して、心地よい空気感を作ること。クラブと協力しながら、ファンの拡大に取り組めればと思います。
選手とサポーターの距離の近さも愛媛FCLの魅力の1つ
私が愛媛FCLを応援する理由の1つは、選手たちの「人間の良さ」に惚れ込んでいるから。チームが創設して間もない頃は、サポーターが1人〜2人だけということがありました。選手の情報もほとんどなく、どうやって応援したらいいものか……と悩んでいたとき、ある選手が全選手のニックネームや得意なプレーを丁寧に書き出して、「この選手はこういう特徴がある選手です!」って私に教えてくれたんです。
1サポーターの存在なんて気にしなくてもいいはずなのに、選手自ら歩み寄ってくれたのが嬉しくて。「自分たちのプレーをより多くの観客に見てほしい」という、ひたむきな気持ちに心を動かされ、愛媛FCLを本気で応援するようになりました。
今はコロナ禍で、選手たちと触れ合う機会が制限されています。だからこそ、試合終了後に選手が車でスタジアムを出る際には、必ず「お疲れ!」と遠くから手を振って全員に声をかけるようにしているんです。昔の私は、チームが試合に負けると怒って何も言わずに帰ってしまうこともありました。けれど、負けた試合の後こそ温かい声をかけてあげるべきだと気付いたんです。
それに、試合に出ている選手ばかりクローズアップされがちですが、試合に出られなくても早朝から一生懸命運営の準備をしている選手もいます。そういった選手たちの姿も、サポーターはしっかり見ています。コロナ禍でコミュニケーションが取りにくくなっても、「一人一人の活躍をちゃんと見てますよ」と、選手には伝えたいと思っています。
苦しいときも愛媛らしく「ブレないサッカー」を。サポーターは選手を信じている
愛媛FCLは、一昨年は10位、昨年は5位という結果で苦戦しています。チームを牽引してきたベテラン選手の引退や、有力選手の他チームへの移籍が続いたことが大きく影響したと思います。今はまさにチームを作っている過渡期かもしれません。
すぐに結果が出ないからといって、サポーターが離れることはありません。愛媛FCLが目指すのは、ボールを大事にして繋いでいく緻密なサッカー。その場しのぎの結果を求めて勝ち点を拾うだけなら、前線でプレッシャーをかけてボールを奪い、カウンターでゴールを狙うという攻撃スタイルもあるかもしれない。けれど、彼女たちは全員でパスを繋ぎゴールに迫るという確固たる信念を持っていて、サポーターもその「ブレないサッカー」に期待しています。彼女たちが貫くサッカースタイルを完成させるには、時間がかかるかもしれません。長い目で見て、結果に一喜一憂しないことが大事だと思います。
だからといって、決して優勝を諦めているわけではありません。チームが結成してから、8年かけてなでしこ2部リーグで優勝しました。1部リーグ昇格をかけたオルカ鴨川との最終戦は、いまだに鮮明に覚えています。スタジアムが約1,200人もの観客の熱狂に包まれて、これ以上の試合はないんじゃないかなというくらい感動しました。
徳永新監督が掲げる、「情熱と美しさ」を兼ね備えたサッカーで、もう一度優勝の感動を味わえたら最高ですね。愛媛FCLが大切にしてきたサッカースタイルは、間違っていないと強く信じています。だから、私たちサポーターは結果が出るまで選手と監督を信じて待つだけ。チームが良いときも悪いときも、良いことも悪いことも全てを分かち合える存在でありたいです。
「選手とチームの成長」がサポーターを続ける力になる
私は、愛媛FCLの18歳以下のチームである「MIKAN」も応援しています。中学生でMIKANに加入し、高校卒業後に愛媛FCLへ昇格して活躍する選手もいます。MIKANは、愛媛で育ち愛媛流のサッカーを体得してきた女子選手が、愛媛でサッカーを続けられる貴重な場所だと思うんです。
先日、U-15チームの公式戦が3年ぶりに開催されました。彼女たちも勝利すればトップチームと同じように、観客の前でラインダンスを披露するんです。当日に備えてこっそりダンスの練習をしていたと聞いて、微笑ましくさらに応援してあげたいという気持ちになりました。
ゆくゆくは、彼女たちのような育成世代が愛媛FCLを担う存在になります。そういった将来のある選手が成長していく姿を、真近で応援できる楽しみがあります。選手とクラブの成長を実感できることが、私が10年も愛媛を応援し続けられる原動力。これからも愛媛FCLとMIKANを全力でサポートしていきます。