マドンナ松山 二神泰佳選手

INTERVIEW

マドンナ松山
二神 泰佳選手

現在在籍中

やり投げ選手から再び野球の世界へ

愛媛松山を拠点とする女子硬式野球チーム、「マドンナ松山」で外野手をつとめている二神泰佳(ふたがみ やすか)です。兄と弟の影響で野球に興味を持ち、小学校2年生の頃に地元のクラブチームで野球を始めました。マドンナ松山の存在を知ったのは中学生のとき。当時のチームは社会人選手が中心でレベルも高く、私のような中学生の選手はほとんどいませんでした。野球は大好きでしたが、徐々に練習から足が遠のくようになり、まともに試合にも出ないまま1年弱で辞めてしまったんです。

その後は、「野球をやっていたなら肩が強いだろう、やり投げをしないか」と中学校の先生に勧められ、高校、大学の7年間は陸上部に所属し全国大会にも出場しました。やり投げは完全なる個人競技。練習をやればやっただけ成果が出る楽しさはありますが、その反面、勝った喜びをチームメイトと素直に分かち合えないもどかしさがあります。自分が良い成績を残せたとしても、他の選手は悔しい思いをしている場合がありますから。

7年間陸上に打ち込みながらも、野球のことは常に頭の片隅にありました。昨年の夏に「マドンナでまた野球をやらない?」と声をかけてもらい、二つ返事で引き受けたんです。陸上部引退を機にマドンナに正式に戻り、久しぶりに野球をやってみて「チームで勝利を共有できる喜び」を実感しました。周りに味方がいるのって、こんなに心強くて嬉しいことなんだって……もし中学校時代に戻れるなら、いろいろな困難はあったにせよ野球を続ける人生を選択していたと思います。今は野球から離れていた時間を埋めるように、野球に没頭しています。

チームに期待される役割を果たせず苦悩。陸上での経験が活かされる場面も

再び野球をできる喜びがこみ上げる一方で、いざ10年振りに野球をやってみると思うようにプレーできない場面も。小学生の頃は体の自然な動きに任せて漠然と野球をしていましたが、野球から離れていた期間が長かったぶん、体の使い方が分からなくなっていたんです。とくにプレッシャーがかかる試合では、その傾向が顕著に現れました。私はチームの中でバッティングを期待されていますが、打つ際に前に突っ込んでしまう癖が抜けず、なかなか打率が伸びませんでした。

そこで取り入れたのが、自身の練習動画を見ながら打ち方をとことん研究する方法。陸上競技ではよく自分の体の動きを分析しますが、とくにやり投げは0.1秒ごとの動作を細切れにして11つの動きを改善していきます。動画をもとにバッティングフォームを見直したり先輩にアドバイスをもらったりすることで、少しずつ結果が出始めました。

加えて、「結果を出すためには準備を怠らない」という習慣も、陸上部時代から大切にしていることですね。陸上部では、インターハイで最高のパフォーマンスができるように照準を合わせて、スケジュールを逆算しながら練習をしてきました。野球でも、できる限りの準備をして試合に臨んでいます。一方で、準備やルーティンにこだわりすぎて本来の力が発揮できなくなるのは本末転倒なので、計画通りに進まなくても柔軟に対応できるように心がけています。

仲が良いマドンナ松山。一緒に闘う仲間を増やしたい

今のマドンナ松山は、私が中学生だった頃と違って10代や20代を中心とする若い選手が多く在籍しています。妹のような後輩たちとたわいもない話をしつつも、遠征に向かう車の中では「どうしたらより良いチームになると思う?」などと真面目な話で盛り上がることもあります。

今年4月に、中四国地方の女子硬式野球チームによるリーグ戦「ルビーリーグ」が設立され、今はリーグ戦の真っ最中です。前期の終盤に差し掛かっていますが、苦しい試合が続いていてチームは下位に低迷しています。今は目の前の試合に全力で取り組み、1つでも勝ちを重ねていくことが目標です。

苦戦の原因は、チームの選手数が少ないことが一因として上げられます。元々の選手数が少ない上にコロナの影響もあって人が集まらず、試合に必要なポジションが埋まらないことすらあります。私たちができることは、まずは目の前の試合に勝利して「マドンナいい試合するじゃん!」って注目してもらうこと。そして、マドンナで野球をしたいと思ってくれる若い人たちをもっと増やすことだと考えています。

私は野球歴はまだ短いですが、年齢でいうと中堅に入ります。30代の主力世代が引退したら、自分が後輩たちを引っ張っていかなければなりません。そのためには、野球を深く知って、ゆくゆくはチームをまとめられるような存在になりたいと思っています。

地元松山を野球の力で盛り上げたい

愛媛は、夏の甲子園の勝率が高いことなどから昔から「野球王国」と紹介されることがあります。けれど、残念ながら私自身はあまり実感を持てないでいます。「マドンナで野球をしてるんだ」と言っても、「何それ?」と返答されることが多いからかもしれません。マドンナ松山の知名度はまだまだ低く、地元の方に高い関心を持っていただいているとは言えないのが現状です。

マドンナ松山は愛媛出身の選手が多く、元々「愛媛松山を野球で盛り上げたい」という信念を掲げてきたチーム。愛媛松山に愛されるチームを目指したいという思いは、世代が変わっても着実に選手に引き継がれています。今はマドンナ松山の知名度をあげるべく、インスタグラムでの情報発信や子供向けの野球教室の開催に力を入れています。

秋には女子硬式野球最大のイベント、「全日本女子硬式野球選手権大会」が地元の「坊っちゃんスタジアム」で開催予定です。2006年から毎年松山で開催されるこの大会を、去年はベンチから見守っていましたが、今年は選手としてグラウンドに立てるかもしれないと思うととても楽しみです。1人でも多くの方にマドンナ松山を応援していただけるよう、これからも大好きな野球を続けてその魅力を伝えていきたいです。

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