INTERVIEW
愛媛FCレディース
筬島 彩佳選手
現在在籍中
ポジションにはこだわらない。自分や仲間の良さが活きるプレーがしたい
今年で愛媛FCL7年目の筬島彩佳(おさじまあやか)です。ポジションはミッドフィルターです。
サッカーを始めたのは、小学1年生の頃。4歳上の兄について男子のチームに入りました。女子は私1人だったため上級生や指導者にも可愛がられて、とにかくサッカーが楽しかったのを覚えています。その後、中学校では男子チーム、女子チームの両方に参加するほど、サッカーにのめり込みました。
高校までに、ボランチ、フォワード、キーパーなどほぼ全てのポジションを経験しました。私は、突出して身体能力が高いわけでもなかったので、「自分の武器」が明確には分かりませんでした。そのかわり、「どうしたら試合に出られるのか、そのために何をすべきか」ということは、自然と考えるようにしていました。
試合に出られるのであれば、ポジションへのこだわりはそれほど強くはありません。
それよりも、多くの試合に出場し「自分の良さが出るプレー」をしたいと思っています。そして、仲間の良いところを引き出すプレーがしたいです。いろいろなポジションを経験したからこそ、相手が望んでいるプレーを想像できるようになりました。「頭で考えるサッカー」、それが私の強みの1つかもしれません。
移籍覚悟で臨んだ2019年の開幕戦
チームが2部リーグ優勝を果たした2019年は、私にとっても勝負の年でした。
2016年、私はIPU・環太平洋大学に入ると同時に愛媛FCLに加入しましたが、最初の3年間は試合に出られない、サブメンバーにさえ選ばれない状況が続いていました。これまで運が良かったとはいえ、中学生の頃からチームの主力で、九州や全国のトレセンに選抜されてきた自負があります。そのため、試合に出られない経験は初めてで、正直ショックでした。
試合出場が自分のモチベーションであるのに、出られたとしても最後の10分〜15分だけ。
この状況が悔しくて、2019年シーズンが始まる前に「試合に出られなかったら移籍しよう!絶対にレギュラーを勝ちとる」と心に決めたんです。それまでは、どこか「短大生だから」とか「社会人1年目だし」という甘えがあったのだと思います。「自分がやらなくては何も変わらない」と覚悟を決めてからは、とにかく試合に出るために努力しました。
初めは、突発的に出場する場面が多く、緊張とプレッシャーに押し潰されそうになることも。自分の良さはボールを触ることで活きるのに、今までの良い流れを変えてしまうかもしれないという怖さから、パスが欲しくないとすら思うときもありました。
その不安を解消するために心がけたのが、練習中も試合の大事な場面を常に想像して、緊張感を持ってプレーすること。「この1本のパスが試合を決めるかもしれない」と自分を追い込んで練習していました。すると、開幕戦は緊張も無く、いつも通りのサッカーができたんです。
開幕戦での手応えが自信となり、徐々に試合にも出してもらえるようになっていきました。この年、チームも勢いに乗り、1部リーグ昇格を果たすことができました。
「愛媛でいい」ではなく「愛媛がいい」。今年こそ1部リーグ優勝を
2020年、日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が設立されました。プロサッカー選手は幼い頃からの夢でもあり、サッカー選手としてより高みを目指したい気持ちはもちろんあります。チームメイトがプロチームへ移籍すると知ったときも、めちゃめちゃ悔しかったです。
それでも愛媛FCLに残ると決意したのは、大好きなこのチームで副キャプテンとしても個人としても、やるべきことがたくさんあると感じたから。
去年は最後まで「チーム」としてまとまらず、納得のいく結果が得られませんでした。失点した後に悪い流れを断ち切れないまま、続けて4〜5点失点したり、連携ひとつで避けられるイージーミスが何度も起こったり……。苦しい場面ほどチーム力が試されるなかで、コミュニケーション不足が原因で勝ち切れない試合が多々ありました。
愛媛FCLの良いところは、全員がチームのためにひたむきに頑張れるところ。私が加入した頃の愛媛FCLは、「良いプレー、悪いプレー」の基準がはっきりしていて、お互いのプレーを厳しく指摘し褒めあう選手が多かったように感じます。それは、メンバーの入れ替わりが少なく、経験やノウハウを蓄積できる環境だったからかもしれません。
けれど、今は状況が変化しています。とくに、昨年はメンバーの入れ替わりが激しく、「愛媛FCLの伝統」を知らない選手も多くいます。チームの一体感を築くために、シーズン後半からはコミュニケーションの取り方を変えました。自分の意見を一方的に押し付けたり、叱咤したりするのではなく、「相手はどう考えているのだろう」と想像し、対話を大切にしています。
今まで先輩方が築いてきた伝統は、引き継ぐ一方で、今のチームにあった運営方法に柔軟に変えていくことも重要だと思うんです。あくまでも目標は、「優勝」。そのためには手段は問いません。個人としても、まだまだ実力が足りていません。もっとサッカーが上手くなり、自分が「愛媛を優勝させられる選手」に成長したいです。
「愛媛でいい」ではなく「愛媛がいい」。理由はうまく説明できませんが、私は愛媛FCLが好きで、このチームでもう1度優勝を経験したいと願っています。
大好きな愛媛で、サポーターの笑顔の回数を増やしたい
私は過去に、喉の甲状腺の腫れや動悸、発汗などの症状が現れる「バゼドー病」を発症しています。
今は薬を服用し、定期検診も受けながら元気に過ごしていますが、2019年の2ヶ月間は全くサッカーができませんでした。目に見えない病気で離脱するという苦しさがあった反面、復帰後はサッカーができる喜びが倍増しました。病気になって、悪いことだけじゃなかったと思っています。
「いろいろあるけれど、最後に笑えたら何でもいい」。笑顔は常に大切にしています。試合で点を取れば、みんな笑顔になるし、勝てば笑える。人の笑顔を見ると、自分も自然に笑顔になれます。
一昨年、昨年とチームは厳しい試合が続きましたが、サポーターの方々は変わらず温かく応援をしてくださいました。応援してくれる人たちがいるから、自分たちはサッカーができるという感謝の気持ちを常に忘れず、今年はみんなの笑顔をさらに増やしたいです。